医学専門 校閲者・翻訳者/医療啓蒙

■見落としや誤診されがちな病気



「どこも悪くない」「気のせい」と言われても・・・体調が悪いときに以下の病気が見逃されているかもしれません。

 不定愁訴症候群ほか,見逃す可能性のある病気--「どこも悪くない」「様子を見てください」と医者に相手にされない,診断がつかないときには,こんな病気が見逃されていることがあります。

 いろいろと身体症状はあるのに,それを説明できる原因が見つからない、分からない。不定愁訴症候群はそんな状況をさして使われることがある表現ですが,実際には原因が見逃されていることがあります。「ドクターショッピングをして医療機関を転々としているが,"なんでもない"、"どこも悪くない"と相手にされない」とお悩みの方は,一度は下記の病気を考えてもよいかもしれません。「どうしようもない」と言われても、まだ打つ手が残されている可能性が残っている場合があります。

 詳細はかかりつけの先生と相談してください。
 誤診には違いなくても、実際には診断が難しかったり、やむを得ない場合もあるので、「誤診」という悪い言葉ですぐに片づけないようにして下さい。



● 歯科疾患--う歯,咬合異常(かみあわせの不良),顎関節症その他。

  悪い箇所をかばう形で食事の時に咬む動作をしていると,他の部位に負担がかかり,そこをかばうと他の部位にさらに負担をかけて全身各所の症状がでてきます。けがした足をかばって歩くと,もう片方の足に負担がかかって,そちらも悪くするようなもの。

● 男性および女性の更年期障害

 男性ホルモンが急激に低下すると,女性の更年期のように,様々な不定愁訴に悩まされます。女性の方でも更年期障害と気がつかずに,苦しまれていることがあるようです。男性,女性のどちらの場合も,症状がつらいときは,性ホルモンを薬という形で補充すれば症状はよくなります。

● 甲状腺疾患

 出産後甲状腺機能異常症が「育児疲れ」「育児ノイローゼ」と誤診されている場合があります。甲状腺組織の破壊により,バセドウ病類似の症状を呈した後に甲状腺機能低下状態になったりします。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺機能低下症も見逃されている場合があります。どうも冷え性で便秘がちと思ったら,甲状腺機能低下症だったということもあります。

● 冷え性

 甲状腺機能低下が原因となっていることがあるのは,前述の「甲状腺疾患」の箇所の通り。しかし,原因が見つからない場合には,西洋医学の分野外といえる状況では,漢方薬を使ってみるとよいかもしれません。詳しくはかかりつけの先生や,漢方薬局でおたずね下さい。

 その他,冷えた手足を直接あたためるより,防寒用の下着を使う,ベストを一枚追加する、カイロで胴体を暖めるといった胴体,身体の中心部を物理的に保温する方法がよいこともあります。

● 外反母趾 

 これも足の異常をかばう結果,他の部位に負担をかけて,他の部位の症状が出る場合があるらしいです。

● 枕(まくら)が身体に合わない

  寝るときに長時間,無理な姿勢を強いられますし,首にはいろいろな神経がありそれが圧迫されるなどの理由で,様々な身体症状がでることがあるそうです。

● うつ病--
「心のかぜ」ともいわれるほど,一般的な病気です。

  軽症のうつ病では身体症状が前面にでます。「気持ちが沈む」「ゆううつ」とは訴えないで,身体症状をよく口にします。例えば,頭が痛い,便秘・下痢がある,コシが痛い,体がだるい,食欲がない,手足がしびれると訴えます。内科,整形外科など一般診療科でいろいろと調べても異常はないのですが,話をよくきくと,朝よりは晩に幾分か具合がよい,寝つきが悪く,夜中によく目がさめる,朝早く目がさめるということがあります。

 具合が非常にわるいときは自殺の意欲さえもありませんが,そこまでひどくないときは自殺を考えていたりします。病気であり,治療によりよくなるので自殺は止めましょう。また,正常な判断ができない状態なので,進路決定,転職,脱サラ,離婚,その他の大きい決断は病気がよくなるまで待ちます。

 (注意)うつ病患者には,しった,げきれいのどちらも不可。しったをすれば「やっぱり自分はだめな人間だ」と考えてしまい,げきれいをしても「期待に答えられないダメ人間なのに」と考えてしまいます。

●耳管機能低下による自律神経失調

 のどと中耳をつなぐ耳管(じかん)という管のはたらきが悪いと,中耳の空気が陰圧となり,どういうわけか,自律神経失調状態になるようです。しかも,両耳とも通気不良だと,耳が多少なりとも聞こえにくくなっているのに,患者自身気がつき難いのです--つぱを飲んだりした時に,急に聞こえがよくなっていて,いままで聞こえがわるかったことにきづいたりしませんか?

● 感染症

 一般細菌以外の感染症でも,不定愁訴がみられることがあります。よく使われるペニシリン,セフェム系以外の抗菌薬,具体的にはテトラサイクリン系,マクロライド系の抗菌薬を試みるのもひとつの方法ですが,かかりつけの先生と相談してください。
 外国への旅行を経験しているなら、特にそれが発展途上国への旅行後ならば、何処の国にどれだけの期間滞在したかを医師に話すと診断に役立つことがあります。
 腹痛の原因が性行為感染症であるクラミジア感染による肝周囲炎ということもあります。

●咳喘息(せきぜんそく),アトピーがいそう(漢字は自分で調べてね)、百日咳

 せきが長く続くが,原因がわからないというときは,これらの疾患があります。ただし,これは原因がないかきちんと調べた後の診断。結核なんかを忘れないように。また,かぜをひいたあとには,せきやたんだけが長引くこともあります。そのほかにも,胃・食道逆流によることもあり。
 成人の百日咳も長引く咳の原因として見落とされていることがあります。

●不眠,昼間の眠気

 睡眠時無呼吸症候群,睡眠相後退症候群,非24時間睡眠周期,むずむず足症候群などが原因のことがあります。

 睡眠の異常については,寝ている間に呼吸が止まり熟睡していない,病的なおそね・おそ起き,昼夜逆転,約25時間周期の生体時計を24時間に同調しにくいといった現象があります。睡眠時無呼吸については,寝るときにテープレコーダで録音のまま寝てみると,いびきがひどかったり,息が止まっていたりします。

 また,睡眠は8時間ねないと不十分ということは必ずしもありません。個人により必要な睡眠時間はちがいますし,"自分にとって十分か"を考え,安易に不眠症と考えないようにしましょう。

●慢性疲労症候群

 とにかく体がだるく,身体を動かすのが非常につらい状態で,単なる過労や睡眠不足とは異なる病的な疲労症状を示します。すぐにはよくなりませんし,明らかに効く薬もありませんが,長い経過のうちにはよくなっていくとされているようです。また,感染症のQ熱が慢性疲労症候群として診られている場合があるようです。

●頭痛(ずつう)

 片頭痛,偏頭痛では典型的な前兆,頭痛の前にカミナリのような光がみえるといった症状がない場合,患者も医師も見逃している場合があります。群発頭痛という病気も見逃されることが多いようです。頭痛や嘔吐を主訴に内科を受診したら,目の病気である緑内障だったという例もあります--内科医には見逃される可能性あり。顎関節症,つまりアゴの関節障害が頭痛の原因という可能性もあります--歯科疾患。

 朝方というより,長い間ねた状態,よこになった後で頭痛がでるなら脳腫瘍の可能性があります。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では,「何時何分から」と言えるほど急に頭痛が出ますが,この場合,頭痛が軽症でも本格的発症の前の警告症状だったりしますので,早急な医療機関受診が必要です。

 低髄液圧症候群(髄液減少症)という医師にとっても聞き慣れない病気で頭痛のこともあります。
 単にめがね、コンタクトレンズの度があっていないだけのこともあります。現代人は近くをみることが多いので、若干近視が残る度にすると疲れ目による頭痛を起こしにくくなる場合があります。この場合は勿論、遠くを鮮明に見たいときには遠用眼鏡を別途用意する必要があります。老視用コンタクトレンズもありますが、お値段は少々高くなります。
 ある雑誌で読んだのですが、鼻の奥の炎症に対する治療をすると、理由はよく分からないが頭痛がよくなる場合があって一部の耳鼻咽喉科の先生が試みられているらしいです。


●慢性の各種痛み
 頭痛、腰痛、首や肩の痛みなどで内科、整形外科などの一般の診療科で具合がよくならないときには、心理的要因も考えて精神科、心療内科に紹介されることもあります。しかし、疼痛治療の専門外来、ペインクリニック(無理に日本語にすると「痛み診療科」)という診療科も病院によってはあります。ペインクリニックという診療科がなくても麻酔科という診療科名でやっているかもしれません。いずれにしても一般に麻酔科の先生がペインクリニックを担当しています。治療の難しい患者さんが多くなる診療科の性格上、一人の患者さんに十分な時間を取るために予約制で紹介患者のみ診察をしていたりしますので、予め現在の主治医に相談する、受診先病院に問い合わせてみるなどして下さい。
 原因がまだ分かっていませんが、線維筋痛症という病気もあります。

●トイレが近い、夜中に何度もトイレに起きる、頻尿
 間質性膀胱炎、過活動膀胱という病気もあります。泌尿器科の医師でも見逃している場合があります。内科の先生にみてもらってもよくならないときは、泌尿器科の先生にみてもらったり、泌尿器科でも相手にされないときはセカンドオピニオンを希望したりしてみましょう。


●胃・食道逆流症(GERD「ガード」と読む))
 胃の内容物が食道に逆流する状態です。従来、逆流性食道炎の原因として有名でしたが、実は他の病態の原因にもなります。胸焼けの症状以外にも、のどに違和感がある、声がかすれる、喘息の調子が一般的治療ではよくならない、狭心症類似の痛みがあるが狭心症の検査をしても異常がないという方は、この病気かもしれません。 

●インターネットのメール、掲示板での医療相談、病気の相談について

・契約により行われる医療機関での診察とは全く異なることを認識して下さい。医師がメールで、あるいは掲示板上で回答しくれても、それは善意で「相談」に応じてくれているだけで、決して診療ではありません。そもそも患者さん側から提供される不十分な情報だけで、対話をしながら必要事項を問診していくことさえできない状況では、適切な判断や助言など不可能です。


・掲示板に相談事を書いて回答があっても、それが医療関係者や十分な知識をもった人とは限りません。不適切な情報であったり、いたずらの回答であったりする可能性も否定できません。実際に不適切な例をみています。情報の信頼性は各自で判断することになります。 

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