医学専門 校閲者・翻訳者/医療啓蒙

医薬翻訳者の年収、報酬額

医学翻訳者、文字起こし、ウェブライター、英語医学論文の日本語抄録作成などの報酬額


医薬翻訳者として働きたい方々には残念なお知らせですが、翻訳会社との取引では
無収入を覚悟してください。


 翻訳会社との取引を希望してもまず仕事はありません。翻訳会社が安い報酬で下手な翻訳者に仕事をさせ続けてきた結果なのか、翻訳会社には注文が入らなくなっています。私を信頼している翻訳会社の数社からも仕事が全く来なくなっています。翻訳会社からの収入は実質的に0円です。まだ注文か入る翻訳会社と取引しようとしても、非常に高い能力の人が内職並みの報酬、または最低賃金を下回る報酬を了承、高額の指定翻訳支援ソフトを自腹で購入するなど、翻訳会社にとってよほどの好条件でないと、仕事はもらえないでしょう。
 医療系大学では医学英語の教育に力を入れるようになってきており、医師や薬剤師等のうち翻訳者の協力を必要とする人の数も今後著しく減ると予想されます。医薬翻訳の市場は更に縮小するでしょう。



○単価
 翻訳会社の下請けで仕事をすると、英文和訳の訳文400文字(原稿用紙1枚相当)あたり800〜1200円です。「今回が最初の仕事だから」など様々な理由で報酬額の減額を要求します。ひどいところになると、「原文の分量を基に報酬を計算するが、単語数を数える費用150-200円を負担してください」「報酬の振込費用は翻訳者が負担して下さい」と言ってくる例がありました。訳す原稿を郵便などで送るときは送料が翻訳者負担という求人広告もありました。

○会社の定時勤務と同じだけ働いても驚きの低収入
 英文和訳 原稿用紙1枚(400文字)の訳文に対して1200円と仮定します。知識が豊富な人で調べ物がほとんど不要であり、訳文がすらすら書けるとしても1日8時間に最大13-14枚程度でしょう。仮に13枚として必要経費を20%(確定申告時に領収書なしでも認めてもらえそうな割合)とし、土日以外は祝日、年末年始も働いたとしてもおよそ330万程度です。

○新規参入者は年収10万、完全無収入もあり得ます
 ですが実際には仕事を全然回してもらえないのが普通です。他の仕事と重なったり、個人の都合で作業のできない日もあります。訳文を丁寧に見直したとしたら1日に書ける訳文の量は減ります。調べ物が必要な仕事や訳すのに時間がかかる原文もあります。1枚1200円どころか1000円、800円という場合もあります。500円という求人広告をみたこともあります。従って実際の年収に関しては、翻訳会社だけとの取引で翻訳会社の言いなりになっていたら、更に年収は低くなります。

○翻訳会社の下請けだけでは生活は成り立ちません
 はっきり言って、専門性に見合う労働報酬ではなく、妻子持ちの男性や子持ちのシングルマザー、シングルペアレントなど、自分以外の生活費も専業でかせぐとなると生活できません。良心的な会社を選んでそこを主な取引先にする、他に安定収入源を確保するといった必要があります。これではいくら求人広告をだしてもよい人材は来ないはずです。その結果、本来ならプロとして通用しない人達が作業を多くしています。
 社内の訳文チェック担当の求人でも「現役翻訳者の訳文を見て勉強できる」「独立の前の準備」などと説明して低い賃金で働かせようとしている例がみられます。専門知識、外国語と日本語の能力を要する仕事で監訳能力のある人を雇うのに、学生や主婦の単純労働アルバイトと同じ時給か妥当なのか、応募側もよく考える必要があります。


<付> 他の在宅の仕事
○ちなみにテープの文字起こしの作業を翻訳こみでたのまれたことがあり、文字起こしの料金を何社か調べたことがあります。実際に作業をする人の報酬は内職レベルになるのではという状況でした。あの報酬額では、文字起こし単独ではとても引き受けられません。

「ライター募集」「ウェブライター募集」というのも内職並みの低報酬で驚きます。あの金額で丁寧に調べ物をして作文を考えてたら必要経費にもならないのではと思ってしまいます。私もライティング、ライター業務を頼まれてすることがありますが、いくら取引先に予算面で制約があっても学生や主婦のアルバイトより低い報酬にはなりません。専門的な内容を一定以上の知識を有する人に頼むという意識がある会社は、それなりの金額を用意してくれます。

医学英語論文の日本語抄録作成
 翻訳会社から相談を受けたことがあるのですが、大元の依頼主が著しい低予算で頼んでくるため、仕事の内容に合わない低報酬になっていました。
 また、ある会社が求人サイトに抄録作成者の募集記事を出していたので問い合わせたこともありますが、そこも低報酬でした。当然ながら能力のある人は低報酬を了承しません。そこの会社のホームページを見ると人材探しに苦慮している様子が見て取れました。

フリーランス向けサイトの医療、福祉系の原稿作成
 フリーランス人材と企業を仲介するサイトがありますが、それらのサイトに出ている仕事はとても低い報酬額のことが多いです。
翻訳会社に翻訳作業を頼まれるお客様もこちらをお読みになり、翻訳会社の下請けとなる登録翻訳者の現状を理解しておきましょう。専門的な作業にみあう報酬が翻訳者に支払われないため、下手な翻訳者しか仕事を引き受けてくれないか、わざと下手な人に低報酬で仕事をさせる傾向があります。