医学専門 校閲者・翻訳者/医療啓蒙

医学・医薬翻訳

翻訳会社 上手な利用方法

「医学に強い翻訳会社はどこか」「よい翻訳会社はないか」と困っている方々に翻訳会社の見分け方や裏側を紹介。翻訳会社ホームページの読み方を伝授。

 翻訳会社は下請け翻訳者に対し、職業として成立しないほど低い翻訳報酬で作業をさせるため、翻訳能力の低い人しか翻訳会社と取引しなくなっています。翻訳会社に仕事を頼んで、よい訳文を入手するのは非常に困難なのですが、少しでも参考になるよう翻訳会社選びの参考事項を述べます。
 実際に翻訳作業をするのは、翻訳会社の外注翻訳者です。従って優で医療分野が得意、または専門という翻訳家を顧客自身で探すのが賢明です。ただネット上で募集しても、希望する水準で訳してくれる翻訳者は希少なのが現実です。


 はじめて医学、医療関係の翻訳を翻訳会社に頼むと、その訳文のひどさに驚くかもしれません。人の手作業ですから完璧なのは無理だとしても、奇妙な訳語、意味内容を考えない直訳など(具体例紹介)、不満が爆発するかもしれません。そんな事態を避けるためにも発注先の事情や賢い利用方法をよく知っておきましょう。試してもよい翻訳会社と避けるべき翻訳会社をよく見極めましょう。


<翻訳会社利用時の裏ワザ>
---優秀な医療翻訳者を翻訳会社に使わせる---
●優秀な個人翻訳者をネット検索して見つけられても、個人とは取引しにくい企業もあるでしょう。その場合は、ホームページ等を作っている個人翻訳者と連絡を取り、登録されている翻訳会社を教えてもらい、そこに発注、翻訳者を指名する手段があります。あるいは皆様の使っている翻訳会社に対して、その翻訳者に発注するよう指示します。指名を断る翻訳会社もありますが、注文側も発注を断ればよいだけです。
●翻訳会社だけでなく、医学論文作成支援会社、編集代行会社等でも翻訳を頼めるところがあります。翻訳会社に下請け(孫請け)に出した後でそれをしっかり校正後、納品してくれる会社もあります。




●翻訳会社 = 翻訳仲介会社

翻訳会社の多くは社内で直接翻訳作業をするのではなく、登録翻訳者に外注しています。そのことを理解しておきましょう。、翻訳者の能力を判断する能力、適任者選定能力の乏しい会社があります。医学と薬学を混同している会社もあります。下請けの翻訳者に対する報酬は、英文和訳では原稿用紙1枚、つまり400文字の訳文あたりの報酬が、主婦や学生のパート、アルバイト時給程度という場合は多いです。安すぎる報酬のために本来ならばプロとして通用しない下級翻訳者に仕事が回りやすいです。しかも、下級翻訳者の書いた訳文を翻訳会社内で校正する体制ができていない会社もあれば、追加料金を要すると思われる会社もあります。


●翻訳会社の能力判定手段

長文を訳してもらうときは、とりあえず冒頭部分だけ発注し、注文先の信頼度を評価する方法があります。ただし、残りを注文するときは同じ翻訳者になるよう翻訳会社に頼みましょう。あるいは、一定分量ごとに納品してもらうよう頼んで、納品後に随時、仕上がりを確認してください。
そうしないと翻訳会社は最初だけ上手な人に訳させ、顧客から注文獲得できた後には安い報酬で仕事をしてくれる下手な下請け翻訳者に訳させることがあります。

翻訳会社ホームページの訳文サンプルについては別項で記しています。


●翻訳上の希望は伝える。ただし、指示は細かすぎないように。

翻訳作業上の希望事項は、しっかりと伝えておきましょう。(1)直訳調か、読みやすい意訳にするか、(2)特定の用語の訳語を指定するか、(2)ですます調、である、(3)文体、訳語や用語の指定など。十分な情報提供をせずに後から苦情を言われても、顧客、翻訳会社、下請け翻訳者と全員が嫌な思いをするだけになってしまいます。一定分量だけ訳してもらってから、訳し方の希望に沿っているか確認し、「こうしてほしい」という希望を改めて伝えるのもよいでしょう。誤訳以外にも文体の好みの違いで、訳文が気に入らないことがあります。
翻訳支援ソフトを使うかどうかも、希望を伝えておきましょう。


●料金交渉はほどほどに

料金を値切りすぎると、その影響が自分に向かってきます。翻訳会社は、安い料金で仕事をしてくれる下手な登録翻訳者に仕事を回すことになります。ただし値切らなくてもその傾向はあります。必要に応じ「前回と同じ翻訳者に」と頼むなど、翻訳者指名の工夫を考えるのもよいです。
できる翻訳者は、仕事の内容に見合う報酬を当然ながら希望するので、低すぎる報酬では仕事を引き受けません。下請けとはいえ許容限度というものがあります。翻訳者の報酬が時給にして学生、主婦のパートやアルバイト並みではよい仕事はできません。「格安」「激安」などの表現で安さだけを強調する会社は避けるのが安全です。


●翻訳という作業の限界

翻訳と作業の限界を理解しましょう。文体の好みの違いや、どうしても他の言語への言い換えが難しい場合があります。原文が悪くて他人には意味が分かりにくい場合もあります。特に和文英訳ではそうです。また和文英訳では日本語を意識過ぎて翻訳ソフト、機械翻訳に類似した作文になりやすいので、自然な英文を希望するならば、事前に翻訳会社に注意を促しましょう。逆に多少不自然になっても直訳調を望むのであれば、その希望を伝えましょう。


●原文の影響

必要に応じて訳者注を入れてもらうように事前に頼むなどしましょう。自分で書いた原文を訳してもらうときには、分かりにくい箇所を指摘してくれるよう頼むことも必要になります。
和文英訳のときには、実際に訳す作業をしてもらう前に、日本語原文の分かりにくくて訳しにくい箇所だけを指摘してもらい、それをなおした後に翻訳作業に進むという段階を必要に応じてとりましょう。英訳しやすいように日本語原文を一度書き換えてもらって(もちろん原文の内容を変えずに)、それを注文者が確認してから実際の訳文作成を頼むと、原文と表現が違う等の不満を感じなくてすむかもしれません。そもそも日本語原文がおそまつで、おそらく忠実に訳しても他人の評価は低そうだと思える場合もありますから、訳してもらう前に原文を十分に吟味して下さい。

<その他>
●翻訳サンプル提示は疑って吟味
 翻訳会社がホームページで掲載している翻訳サンプル(訳文見本)はよく読んでみましょう。不自然な訳がされていることがあるので、サンプルは品質の自信の反映とてして安心し注文するのではなく確認してみましょう。
 翻訳会社がホームページ上で出している翻訳サンプルを何社も探して調べてみたのですが、原文と訳文を照らし合わせると、和訳でも誤訳や不自然な訳文がみられます。著作権の問題があるのか、英文和訳見本の英語原文を自作した結果、英語原文にも不自然な表現があったりもしました。
 和文英訳では原文を参照すると訳し忘れ、原文とは意味の違う文章になっているといった問題がみられました。意味は通じて文法的には正しくても、いかにも機械翻訳みたいな直訳調で違和感を感じる訳文も多くみられました。日本語原文は医療関係者向けと思われるのに、英語は医学文献的な表現ではなく、一般市民向けの表現になっていた会社もありました。
 英文校正をしてくれる会社の校正サンプルも実際に妥当な作業がされているか確認した上で依頼先を決めましょう。また、どこまでていねいに修正するかによっても校正料金は異なります。


●翻訳者求人情報にも注意!
 翻訳者の求人情報にも目を配ってください。実際に作業を行う登録翻訳者に評判の悪い会社は、常時「急募」という場合もあるみたいです。よい翻訳者が集まらないのか、常時募集を続けているのに、いかにも新規に募集をしていかのように求人をしている会社もあります。求人応募者のふりをして何か問い合わせをして、その対応を調べて翻訳者に対する誠実度をみるのも一つの方法です。質問にすぐには応えない、または回答を拒んで履歴書送付を要求するだけという会社は避けた方がよいかもしれません。あちこちの求人サイトに翻訳者募集記事を出している会社にも、何か人材が定着しない理由があるのかもしれません。
 さらに、求人応募者への採用試験(訳文作成)の結果を通知するまでの期間も確認してみてください。まる1か月以上かかるなんて不自然ですから、そのような会社は要注意かもしれません。会社のホームページ上だけの翻訳者募集では募集者は多くはないはずです。
 翻訳会社が応えてくれるかは会社により異なりますが、下請け翻訳者に対する報酬額も、できれば翻訳者のふりをして聞いてみるとよいです。専門知識と技術を要する仕事をするのに不相応な報酬しか出さない会社には、有能な人材は定着しにくいと思われます。その結果なのか、医療関係者が読むと非常に奇異に感じる訳文を正解として要求する翻訳者が社内にいて訳文管理をしている場合があるようです。
 翻訳会社から翻訳者から受け取れる報酬金額について、翻訳会社の利用者に話すと、誰もが驚く少額です

●「専門の翻訳者」が作業というのは?
医学知識が豊富で医学英語、医学文献の英語に詳しい翻訳専門家という場合がある一方、医薬分野担当で登録している翻訳者が作業するという意味に過ぎない場合があります。後者の場合、翻訳能力は高くないことがあり、それ以前に翻訳会社には求人応募者の能力を判定するだけの実力のない例があります。意味の通じない直訳調の奇異な日本語に訳すことを翻訳会社から強要されていると話していた医療関係有資格者もいましたから、きちんとした訳文を書いても実力のない社内勤務者が訳文を悪くしている恐れもあります。
 医師等の医療関係者が訳すというときにも注意が必要です。日本語の作文能力がなくて意味の通じない日本語訳をしてくる医療関係の有資格者がいます。和文英訳でも、病名の英語をきちんと調べない、自分の都合のよいように解釈して訳したりなど、いろいろと問題があります。


●訳文の希望精度は?
 訳文の出来具合に対する要求度に応じて翻訳会社を選ぶのもよいです。参考程度に内容が分かればよいのであれば、品質が悪くても安ければよいという場合もあると考えられますが、その場合は高いが品質も良い会社に頼む必要はないかもしれません。
 逆に質の高い訳文を必要とするとき、下手な会社に頼むと後が大変です。注文者自らが修正する、別の翻訳会社に修正を頼みお金も時間もかかるという字体もあり得ます。別の会社に修正を頼んでも元の訳文がひどすぎると「修正は無理」「白紙から訳文を書くより修正の方が大変」と修正を断られるかもしれません。「私自身、「他の翻訳会社が作った訳文を修正してほしい」と頼まれた時、顧客にとって正確な翻訳を必要とする事情を配慮し、白紙から訳しなおした方がよいと提言したことがあります。

●必要に応じでやり直しを指示!
翻訳会社の訳文がひどすぎるときは、やり直しを頼みましょう。そのときは一定分量を注文者自らが校正してみせて訳文のまずさを相手に分からせましょう。黙っていると、この顧客には下手な翻訳者に安い賃金で仕事をさせておけばよいと思われてしまいます。やり直しを命じられてからでないと、賃金支払い額が高くなる上級翻訳者に仕事を回さない会社もあります。しかもひどいと、上級翻訳者の手配ができずにやり直してもらえない危険さえあります。下請けとなる上級翻訳者にしても突然、「今日今から修正作業をしてほしい」と翻訳会社から頼まれても都合がつけられるとは限りません。私の取引先翻訳会社の一つでは、御客様から「自分達でどうにかする」と言われたと話していた事があります。

●「医薬専門」の翻訳会社の信頼度
医薬専門の翻訳会社関係者からも「値段の割には訳文の質がよくない」と顧客から言われるとのメールをもらったことがあります。「大手も含めてどこに頼んでも失望ばかりで、下訳と割り切って安いところに頼んでいる」という方もいました。医薬専門の翻訳会社だからと安心はできないみたいです。

●登録翻訳者の多さだけでなく実働率はみる
「医薬分野の登録翻訳者○○○人」という表現は要注意です。何故ならば登録しているだけで実際には翻訳会社が仕事を回さない人の割合が高く、万が一大量注文が来た時のための補欠要員も含めての登録数だからです。実働率が1-3割程度の場合もあります。登録翻訳者が大勢いるのに、注文が入ると別途求人をしている場合もあるようです。信頼できる登録翻訳者の割合は少ないと考えておくのが無難です。登録翻訳者の数を強調する会社がありますが、注意しましょう。

●英文校正の限界
 お客様自信が英作文をしてそれを翻訳会社、英文校正会社に頼む時には、日本語の作文でも同じですが、他人が読んで理解できる文章になっているかという点に注意が必要です。何を言いたいのか分からなければ校正はできません。原文となる和文原稿が添付されている場合でも、日本語が意味不明ということがあります。これでは校正のやりようがありません。
  顧客の作成した訳文を英米人が校正をしてくれる場合であっても、医学論文特有の表現を知らない人が校正をしていて一般英語になおされる危険があります。また、英文校正会社のサンプルを見ていると、確かに改善してくれていると思える場合もあれば、何かすっきりとしない校正がされている場合があります。なぜかと考えみたのですが、顧客が英作文をするときに翻訳ソフト調に訳した影響が残るという問題がありそうです。単純に短く言える内容を長々と表現したり、意味は推測できるが明確に伝えるべき内容が表現されていないことがあります。所詮は他人である英文校正者は修正しきれないようです。

●原文のでき具合に注意
原文が悪すぎて本来ならば翻訳が不可能であっても、翻訳会社や下請け翻訳者はお金欲しさに仕事を引き受ける場合があります。もちろん原文が悪すぎるのでよい訳文はできません。原文が意味不明なら、訳文も意味不明になります。良心的なところなら原文の状況について顧客に確認してくれるでしょうが、そうとは限らないことに注意しましょう。

●受注後の求人広告
 翻訳会社に注文をした後に、翻訳会社ホームページの求人ページまたは翻訳関係の求人サイトをみてみましょう。確認するのは自分が注文した翻訳案件の作業者を募集しているかです。人材不足の会社が受注してから慌てて求人をしている場合があります。それが分かった時点で注文を取り消すのも一つの選択肢です。
またこういう会社の求人に対して誰か信頼できる人に応募させて、採用試験(トライアル翻訳)を受けさせてみるもの面白いです。きちんとした訳文を提出しても不合格となると、その会社への注文はキャンセルするのがよいかもしれません。

●native speakerのチェックの影響
 英語を母国語とする人が英訳の校正をしていても、日本語原文を理解できない外国人だと、原文とは違う意味の文章に書き換えられる恐れがあります。できあがってきた訳文はよく確認しましょう。

翻訳支援ソフトの有無
 下請け登録翻訳者に指定の翻訳支援ソフト、翻訳メモリを購入させて作業をしている翻訳会社が増えています。この場合支援ソフトがあるからとの理由で翻訳者に対する報酬をかなり下げている場合があります。そうなると下手な人しか仕事をしなくなり、訳文の質が落ちる危険があります。、翻訳支援ソフトに利点はあるとしても、その限界も考えなければなりません。その限界を考えずに、発注先会社がすべてまたは大半の翻訳作業に対して支援ソフトを使っているかも考慮しましょう。その会社の求人広告、採用情報を会社ホームページ内で確認できることは多いです。

和文英訳 (和英) 翻訳時にはまず英訳しやすいように日本語原文チェックを頼む
 英文和訳と比べると、原文である日本語は意味があいまいであったりします。日本語では主語を明記しなくても一つの文を書けるので、主語がはっきりしないということもあり得ます。日本語では名詞について単数形、複数形が不明確なのに英語にするときにはそれを区別しなければなりません。日本語の表現を単純に翻訳ソフトのように訳すと英文としては不自然になることもあります。英文としては日本語原文にある単語を一部省略して訳出するのがよい場合もあります。
 注文者にしてみれば誤訳や訳抜けだと思ってしまうかもしれません。そういう事態を避けるにはまず日本語原文を添削してもらうことが考えられます。すでに完成された、公表できる水準の日本語原文ならよいですが、そうでないときには他人である翻訳者に理解できる文章に修正してからでないとよい訳文にはなりません。
 医学論文を日本語で書いて翻訳会社に英訳を頼みたいということはあるでしょう。よりよい訳文を得るにはこういう手間もかける必要があります。




翻訳会社の選び方、利用方法の相談にも応じています。

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