医学専門 校閲者・翻訳者/医療啓蒙

翻訳会社関係者の裏話


翻訳会社を利用するに人とっては知る機会の乏しい、会社関係者の発言や出来事、裏話を紹介します。

☆「医学、薬学が専門の一つになっているが、これだけの料金を取っておいてこの仕上がりなのかとお客様から言われる。」

☆「コンピュータ、翻訳ソフトで作った訳文を下訳にして訳文を作成してほしい(つまり機械翻訳の訳文を修正してほしい)。翻訳能力の高い人はかえってやりにくいかもしれませんけど。」
----だったらなんで翻訳ソフトを使った訳文を用意するのかという疑問がありますよね。

☆「訳文がひどすぎる。どうにかならないかとお客様から言われている。」
--- この会社は私が他の人より上手なので私を登録しましたが、一件の仕事も私に回さず、下手な人に低賃金で仕事をさせ続けました。

☆求人サイトに医療分野の翻訳者募集記事を出したが、和訳を頼める人は何人かいても、英訳を頼めそうな人は貴方一人だけだった。
----当時は英訳は未経験だったのでその旨を伝えましたが、それでも私に英訳担当を熱心に希望していました。

☆いくら求人広告を出してもよい翻訳者が応募してこないので、多少問題のある人を使っている。
----無理に特殊な医療翻訳を手掛けるべきではないと思われますが、消費者の皆様はどうお考えですか。

☆求人広告の文言ですが、「低報酬でも作業をしてくれる人を希望します。実績を作りたい人、ステップアップのためにと考えて…」
----これで「プロ」として通用する翻訳者が仕事をしてくれるのかと思ってしまいます。

☆求人の珍事件-他社ホームページの訳文見本を用いて翻訳能力判定試験
 某社の求人に応募したとき、いわゆるトライアル(翻訳能力判定ための訳文作成試験)で、「どうも原文がおかしい」と思っていたら、他社の原文・訳文見本の組み合わせを用いている会社がありました。そこの社員は、翻訳会社ホームページ掲載の原文や訳文には不自然な個所や誤訳が珍しくないのを知らず、便利な原文・訳文の組み合わせと思って他社サイト掲載の原文・訳文の組み合わせを利用していたようです。私が求人に応募したそこの翻訳会社には状況を説明しました。回答によると、すでに退職した社員が試験素材に用いていたものを、そうとは知らずにそのまま使っていたとのことでした。


☆私の関与している翻訳会社の出来事。
 医療分野はこの人に頼みなさいという社長の指示を無視し、社員が下手な人に頼み続けていました。お客様から訳文がひどすぎるのでやり直してくれと言われてから私に修正を頼んでくるということを続けていました。私の都合がつかずに修正してあげられないこともありました。そうこうしているうちに、多くのお客様の信頼を失ったのか、ある時点から医療関係の注文がほとんど来なくなりました。社員がこっぴどく社長から怒られたのか、あるときから医療分野であればまずは私に打診をしてくるようになりました。「医療分野は○○さんに頼むように言っているのに、上手く伝わってないのだろうか」と社長が話していたのが印象的でした。

☆私が仕事を頼まれて困ること。
 生活が成り立たないほど低報酬の仕事は断っていますが、それ以外でも困ることがあります。

・ 和訳は比較的きちんとした英文が多いのですが、和文英訳は日本語原文が悪くて困ることは多いです。翻訳会社の下請けでは直接お客様に日本語の意味を確認するのは難しく、無理にこちらで解釈し訳して後から苦情を言われるのも嫌でよね。しかたなく事情を原文または訳文に付記して訳文を納品することがあります。
 日本語原文通りに翻訳ソフトみたいに訳しても英語として不自然になるときにも困ります。原稿の分量が少ないときは、こちらの判断で訳して注釈を入れて事情を説明するなどせざるをえません。分量の多いときは、一定分量だけやって一旦納品するなりすることになるでしょう。

・夕方になり多くの会社で残業時間帯になる頃、作業依頼の電話をしてきて「添付ファイルを見て訳せるかすぐ判断してほしい」とのお話。もうパソコンの電源は切ってしまいすぐには見られないのに、そんなこと言われても困ってしまいます。

・金曜日の夕方に仕事の話が来て、週末も作業をして月曜の朝に納品してほしいという話もあります。実際に作業をしてから上手く出来なくても会社とは連絡が取れなくなり断れないので、私は基本的に引き受けないことにしています。

・他の人が書いた和文英訳の校正を頼まれたときのことですが、日本語原文の作文が悪すぎて意味不明、翻訳は到底無理という状況でした(どうやら外国語の原稿に対して下手な翻訳者が作った日本語訳を次に英訳する作業らしかった)。他の翻訳者が訳文を書く前に打診があったので、そのことを翻訳会社には話してお客様に連絡するよう進言したのですが、翻訳会社の回答は「"翻訳者"に確認します」。お客様には連絡しなかった様子です。後日訳文が私のところに送られて来て校正を頼まれましたが、どうにもなりませんでした。


☆訳文の「正解」基準って?
 他の翻訳者が訳して「訳文がひどすぎる」と苦情を言われても私が修正すると、最初の訳文の影響は残るにしてもお客様は一応の納得はしてくれる。他の翻訳者が訳したものを更に私以外の人が修正してこれまた苦情を言われ、最後に私にまわって来ても、私が訳すとやはり一応の納得はされる。二つの翻訳会社で分担して訳した仕事では、他社の訳文が不良で、結局は私が登録されていて私が作業したほうの翻訳会社に修正依頼の話がきたということもあった。
 大学教授など専門医が監訳者になっているときも、私の訳文はよくできていると評価してくれる。「特に修正はせずにそのまま使ってもよい」という話さえあった。
 ところが翻訳会社の求人に応募し、課題文翻訳(通称、トライアル)に応じると、きちんと訳しているのに不合格になるという不思議な現象が起こる。
 お客様や医療関係者は私の訳文をよく評価してくれるが、翻訳会社は実務能力なしと判断するのってどういうことか。お客様は「翻訳会社は、大手も含めてダメ」と言う。翻訳会社の訳文正解とお客様の正解は異なっていて、私はお客様側の作文になってしまうため、翻訳会社には不評の場合があるのかもしれない。

☆英語講演の翻訳
 英語講演、番組などの翻訳では、英語の文字起こし(リライト、話された英語の文字化)という工程を経て、次にその英文を和訳するという場合がある。日本語講演を外国語にする場合も当然ある。文字起こしの作業を頼まれたことがあるが、社内勤務なら法的最低賃金を下回る報酬額で断った経験がある。
 また、日本人の自分が聞いて分かる英語であっても、医学の専門教育を受けていない英語 nativespeakerでは分からない場合があるようだ。英文文字起こし原稿翻訳を定期的に頼まれていた時期、よく英文原稿の誤りを訳文に付記していたものである(この仕事では画像+音声が添付されていた)。